期間:
2024年10月12日(土) - 2025年1月19日(日)
前期:2024年10月12日(土)~12月1日(日) 後期:2024年12月3日(火)~2025年1月19日(日) 10:00〜18:00(金・土曜日は20:00まで)
2024年10月12日(土) - 2025年1月19日(日)
前期:2024年10月12日(土)~12月1日(日) 後期:2024年12月3日(火)~2025年1月19日(日) 10:00〜18:00(金・土曜日は20:00まで)
金沢21世紀美術館
展示室1〜4、デザイン・ギャラリー、長期インスタレーションルーム、交流ゾーン
一般 450円(360円)
大学生 310円(240円)
小中高生 無料
65歳以上の方 360円
※( )内は団体料金(20名以上)
※当日窓口販売は閉場の30分前まで
月曜日(ただし10月14日、10月28日、11月4日、1月13日は開場)、10月15日、10月29日、11月5日、12月29日–1月1日、1月14日
市民美術の日 オープンまるびぃ2024:
11月3日(日・祝)
美術奨励の日:
会期中の毎月第2土曜日(10月12日、11月9日、12月14日、2025年1月11日)
金沢市民の方は本展を無料でご覧いただけます(要証明書の提示)
金沢21世紀美術館 TEL 076-220-2800
当館の収集活動は、開館前の2000年から始まり、現在に至るまで継続的に行われてきました。開館20周年を迎えるにあたり、一年間を通した大規模なコレクション展にて、その収集の歴史を振り返ります。
当館の収集方針の一つに、「1980年以降に制作された、新しい価値観を提案する作品」があります。「都市化」は1980年代以降、現代美術の重要なテーマとなり、世界中の展覧会において、取り上げられてきました。その多くは、資本主義の発展とグローバリゼーションの時代背景を反映し、都市化がもたらす問題を大きな物語として提示するものでした。
資本主義によって駆動する都市は、まるで昼夜を舎かず奔流する川のように前進し、個々の人間の記憶や感情を暴力的に消し去っているようにも見えます。「コレクション展2 都市漂流」では、都市という川に漂流する一個人へのケアをテーマに、当館のコレクションから都市生活にまつわる個人の体験に焦点を当てた作品を紹介します。これらの作品は、夕方5時の街に漂う夕食の香りや、夜11時に閃くネオン管の光のように、日々の忙しさに埋もれた鑑賞者の日常の記憶を呼び覚ますトリガーとなるでしょう。
日時:2024年10月13日(日) 13:00〜14:30(予定)
会場:金沢 21世紀美術館 レクチャーホール
日時:2024年11月中旬の週末 14:00〜15:30(予定)
会場:金沢 21世紀美術館 レクチャーホール
※詳細が決定しましたら、ウェブサイト、SNSでお知らせします。
日時:2024年11月以降 14:00〜14:45(予定)
集合会場:チケットカウンターの裏
※詳細が決定しましたら、ウェブサイト、SNSでお知らせします。
日時:2024年11月以降 14:00〜14:45(予定)
集合会場:チケットカウンターの裏
当館は美術館の活動や学芸員の仕事に関心を持ち、将来、美術館や芸術、そして生涯学習に関わる現場で働く意思を持つ大学院生に対して、インターンシップを実施しています。
学びの実践の場として、インターンシップ研修生によるギャラリーツアーを実施します。
※詳細が決定しましたら、ウェブサイト、SNSでお知らせします。
前期:2024年10月12日(土)~12月1日(日)
《SUPER RAT (Showcase)》 2011–2012年
エリイ、卯城竜太、林靖高、水野俊紀、岡田将孝、稲岡求によって2005年に結成。個人的な興味から世界が直面する問題や闇を自らの身体を介したきわめて直接的な行為により露呈させ、写真や映像に記録する表現活動で、活動開始直後より注目を浴びてきました。2022年にChim↑Pom from Smappa!Groupに改名しました。
Chim↑Pomの活動の根幹ともいえる「SUPER RAT」は、繁華街に生息するクマネズミを彼らが虫取り網で捕獲する行為を記録した映像と付属のオブジェから成る作品です。2006年以降、渋谷センター街で駆除され続けた結果、毒代謝能力が高まったネズミ「スーパーラット」が都市に生き抜く姿に自身を重ね合わせたChim↑Pomは、作品《SUPER RAT》を自画像として制作しました。《SUPER RAT (Showcase)》は、2011年の原発事故後に再びこのモチーフに向き合い、新宿にて撮影されたものです。作品は2006年の捕獲行為、2011年の捕獲行為、ネズミの生態観察の映像3点からなります。作中で捕獲した渋谷のネズミは都市風景の一部であり、都市住民そのものでもあります。環境及び生活が脅かされる中、生き生きとした生命力を放つネズミの進化とサバイバル力に、来るべき人間像を重ね合わせています。
後期:2024年12月3日(火)~2025年1月19日(日)
《ホームジャーニー》 2005年
《ホームライク II》 2005年
1960年イスタンブール(トルコ)生まれ、ウィーン(オーストリア)在住。
20歳でウィーンに渡り、今も同地で暮らすダグデレンは、「故郷」や「家」をテーマとし、軽やかでありながら強いメッセージを発する作品を制作します。トルコの建築、美術やカリグラフィーなど、自身の出生地域の文化ルーツへの参照をもとに、しなやかな感性で作られた造形が特徴的です。国境、民族、文化などに関する人間の帰属やアイデンティティの観点が、作品において批評的に提示されています。
オスマン建築とユルト(遊牧民のテント式住居)両方を想起させる形を持つ彫刻《ホームジャーニー》は、地面に根付いておらず横向きに飛んでいるように展示されます。写真作品《ホームライク II》の被写体は、ショッピング袋をいくつも提げて通りを歩く移民女性の後ろ姿だと思われます。個人的な感覚や移民としての経験を出発点としながらも、ダグデレンは、現代社会において人が「住む」ことの多様な在り方や、「家」「共同体」についての柔軟な解釈を我々に問いかけています。
後期:2024年12月3日(火)~2025年1月19日(日)
「東京郊外」シリーズ、「M」シリーズ
1962年東京都(日本)生まれ、同地在住。
日本大学藝術学部写真学科で写真を学び、1980年代後半より、国内外のファッション誌を中心に広告写真やCDジャケットなどを多数手掛けてきました。一方で様々な都市もしくは都市近郊のニュータウンの風景、さらにはそこに暮らす子供を独自の距離感で撮影し、自身の作品シリーズとしてまとめています。
「東京郊外」シリーズの被写体は都市及びその周辺環境や居住者の生活の様子です。シルクスクリーン作品「M」シリーズの被写体は世界各地のマクドナルドの店舗です。ホンマの語る「写真を使った世界の見方を様々に問いかける試み」の実践として、これらのシリーズは、日常風景に特別な意味を持たずに撮影されました。
後期:2024年12月3日(火)~2025年1月19日(日)
《ストック・エクスチェンジ》 2000年
1970年ペヤ(旧ユーゴスラビア、現コソボ)生まれ、ニューヨーク(米国)在住。
写真や映像、彫刻にインスタレーション、パフォーマンスまで、ジャファの活動領域は多様ですが、多くの作品において、出身国での戦乱と政治社会的状況とも繋がる、移民や移動、暴力や権力、偏見や社会的疎外などのテーマが表れています。
証券取引を意味する《ストック・エクスチェンジ》は、リュブリャナ(スロヴェニア)の鉄道駅にてジャファが行ったパフォーマンスを収めた映像作品です。ビジネススーツを身につけた作家本人が、人々が行き交う列車の発着表示板の前で、あたかも立会場で株売買を行う仲買人のような手振りと声音で列車の発着を伝えようとします。ヨーロッパで国境を越える移動手段でもある鉄道を舞台として撮影した本作は、経済の自由化によって出稼ぎや移民が余儀なくされている東ヨーロッパ諸国の社会経済状況について暗に言及しています。
《道端のマレーヴィチ》 2016年
《前代未聞の自由》 2016年
《ところにより雨》 2010年
《鍵の束》 2011年
1980 年浙江省(中国)生まれ、北京(中国)在住。
陳維(チェン・ウェイ)は中国の一人っ子政策、1980年代改革開放政策以後に生まれた世代を代表するアーティストの一人として、急速な経済成長に伴った都市化の幻像と実態とのギャップを、主に写真やLEDというメディウムを用いて写し出し、社会に対する個人の視点の在り処や、世界と個人との関係を客観的かつ鋭敏に問い直しています。
《鍵の束》は、陳維が父親をモチーフとした写真作品です。ズボンに下げている鍵の束に、大量の安価なキーホールダーがついています。《道端のマレーヴィチ》と《前代未聞の自由》は、都市の街頭でよく見かける1行のみのLED電光掲示板を用いた作品です。文字情報のない/読めない電光掲示板は、広告媒体から脱却し、都市風景の一要素として抽象化されます。《ところにより雨》では、狭い天窓しかない半地下室に見える部屋の様子を写真でとらえました。これらの作品は、中国の急速成長を陰で支えた出稼ぎ労働者を想起させます。
《skyline-TOKYO-》 2019年
1983年東京都(日本)生まれ、同地在住。
主にロストワックス鋳造技法(失蝋法)を用いて金工作品を制作するアーティストです。様態を変えながら増殖し、構築されていく都市のうごめく姿を想起させる久野の作品は、重厚な金属の質感と共に、細部にまで技巧を凝らした表現も併せ持ちます。
東京に生まれ育った久野は、2011年の東日本大震災以降、都市空間における人造物と人間の手によって侵食されていく自然環境を意識しながら、鉄道や高速道路、建造物の輪郭で描画した都市風景を精密な鋳造技法で表現します。《skyline-TOKYO-》は、2021年開催のオリンピックに向けて変わりゆく東京の姿に、他都市の変容を重ねて表現しています。東京湾に架かるレインボーブリッジからの視点で、空を背景にしたビル群に高速道路や建設途中のクレーンが複雑に折り重なる眺望がモチーフとなっています。
《働く女性たち―建設中》 1999年
1967年サラエボ(旧ユーゴスラヴィア、現ボスニア・ヘルツェゴビナ)生まれ、パリ(フランス)在住。
パフォーマンスや映像を表現の核とするマヤ・バイェヴィッチの作品には自身の取り巻く環境、経験が複雑に織り交ぜられ、また歴史や社会情勢が強く反映されています。特に移民の問題や、社会の中での女性の役割、周縁に置かれた人や事柄に焦点を当て作品に取り入れながら、現代社会の諸問題を多角的、重層的に表現しています。
《働く女性たち−建設中》は、バイェヴィッチの初期の活動の代表作であり、《働く女性たち》というタイトルの下に制作された3作品のうちの最初の作品です。紛争で崩れた建築の修繕作業のため、ボスニア・ヘルツェゴビナ国立ギャラリーの外壁に足場が組まれネットで覆われました。バイェヴィッチは東ボスニアからの難民である5人の女性とともにそのネットの上に刺繍を施すパフォーマンスを5日間行いました。その様子を捉えた本映像には、男たちが工事作業を終える日没頃から女たちが交代するように現れ、照明の下で黙々と刺繍をする様子が映し出されます。美術館で保護される国家文化遺産としての美術作品と家庭的で土地特有の手工芸の対置、昼間に行う男性の建築仕事と暗闇の中で静かに行う女性の刺繍作業、公的領域と私的領域が複雑に織り交ぜられる中、社会情勢、ジェンダーの問題が多角的に提起されています。
《金沢の自動ドア》 2004年
1961年ブリュッセル(ベルギー)生まれ、ストックホルム(スウェーデン)在住。
ヘラーは単体の立体作品から空間全体に及ぶ大規模なインスタレーションに至るまで、様々な手法を駆使しながら、知覚の不確かさから現実への懐疑をもたらし、観賞者の感性を拡張する作品を発表しています。
《金沢の自動ドア》は、都市建築によく使われる建具である自動ドアから構成された作品です。当館の展示エリアの通路の幅に合わせて製作された全面鏡張りの自動ドアは、廊下の長さに合わせて等間隔に設置されます。通行人は扉を通り抜けるたびに無限に反射する世界に身を置かされ、果てしないリミナルスペースを体験できます。
前期:2024年10月12日(土)~12月1日(日)
《Muddy Stream from a Mug》 2004-2012年
《Games, Dance and the Constructions(Soft Toys) #12》 2015年
《Endless, Nameless #1》 2014年
1978年京都府(日本)生まれ、同地在住。
日常に見られる生活雑貨、おもちゃ、スポーツ用品などの大規模生産による工業製品、雑誌、書籍、包装紙の切り抜きなどを集め、接合や変形によって、絶え間なく変化していく様子を想像させる彫刻やインスタレーション、映像作品などを発表しています。
《Muddy Stream from a Mug》は紙にコーヒーをこぼし、染みの形に添って切り抜いたものと、日常生活によく目にする工業製品を組み合わせた彫刻作品です。《Games, Dance and the Constructions (Soft Toys) #12》では、漫画や雑誌の背景にあるモチーフを布に写し取り、詰め物をしてぬいぐるみにしたものをアクリルボックスに詰め込んでいます。
《Endless, Nameless #1》は雑誌の切り抜きなどを集め、接合や変形によって、絶え間なく変化していく様子を想像させるコラージュ作品です。大量生産の商品のイメージを自由に操る様は、ポップ・アートを継承しつつ、高度化した資本主義と美術の領界をあらためて示しています。
後期:2024年12月3日(火)~2025年1月19日(日)
《waiting for awakening -chair-》 2012年
1974年京都府(日本)生まれ、神奈川県在住。
時間や記憶についての省察をナフタリンや塩といった素材を使ったオブジェやインスタレーションで表現し、昇華や結晶化といった自然の変化を巧みに取り入れることで視覚化する作品で知られます。
直方体の樹脂の中に浮かび上がるのは、常温、常圧で昇華するナフタリンで象られた椅子です。ナフタリンの淡い白がその「誰か」の不在を際立たせ、記憶を象る沈黙を形作っています。しかし、椅子の足元にある空気穴を開ければ、椅子が昇華によって次第に形を失い、止まった時が再び動き出します。《waiting for awakening -chair-》は、個人に関する記憶が時と共に薄れていく様子を具象化したような作品です。
《無題》 1999年
《クリストファー》 1998年
《ビル》 2000年
《ローレンス》 2000年
《レームブルック》 2000年
《カローラ》 2000年
《ダニエル》 2000年
1948年バート・オルデスローエ(ドイツ)生まれ、ベルリン(ドイツ)在住。
1980年代初頭、床置きの大掛かりな彫刻で注目を集めた後、油彩、写真、映画など多岐にわたる媒体を用いながら作品を制作してきました。荒々しさと繊細さ、開放性と閉塞性、透明性と不透明性など、相反する2つの概念をひとつの俎上に載せる作品を作り続けています。
本展で展示する一連の作品は、人物をモチーフとした彫刻作品です。大半は作者の身近な人物をモデルとしていますが、中には《レームブルック》(ヨーゼフ・ボイスに影響を与えたドイツの彫刻家)のように、歴史上の人物をテーマとした作品も含まれています。一連の作品には、木やスチールなど彼女が一貫して用いている建築資材が多用されています。一方、本体に写真や鏡を重ねて貼り付ける手法は、彼女が「収集」や「参照」をキーワードとした制作を志向していることを物語っています。
《プライウッド新地》 2017–2019年
1964年東京(日本)生まれ、同地在住。
1990年代より家電を用いたサウンド・スカルプチャー「Love Arm」シリーズを制作・発表。2004年からは、回転するモーターを工業製品の象徴であると考え、家電や家具を組み合わせた大規模なサウンド・スカルプチャーとパフォーマンスによるプロジェクト「ザ・ローテーターズ」シリーズに取り組んできました。戦後の日本における輸入文化受容のあり方や、大量消費・大量廃棄社会への批評性に満ちた作品を制作しています。
《プライウッド新地》は、エレキギター、家電などの日常生活でよく目にする工業製品や美術品輸送用の木箱をDIYで独自に組み合わせたインスタレーションによるパフォーマンス、そのパフォーマンスのライブ映像、そして宇治野自身が英語でナレーションしたドキュメンタリー映像で構成された劇場性を持つ複合作品です。映像は、宇治野の育った練馬区が1970年代から1980年代にかけて、駐留米軍返還地の団地化や大型施設が建ち並ぶことで大量消費の街へと変容していくありさまを基軸に制作されています。映像は3章構成で、第2章では実家の原風景や家族の歴史が語られます。
《ホンコン・アイランド/チャイニーズ》 1998年
《2階建てジャングル》 1999年
《スカルプチャー・ガーデン・ウィズ・ガーデナー》 1999年
《ハロー・バット》 1999年
1965年静岡県(日本)生まれ、東京(日本)在住。
1990年代初めから、 映像、パフォーマンス、彫刻、写真、ドローイングなど多様な手法を用いて、コンセプト性の強い作品を制作しています。
中国に返還後の香港島の夜景を表した《ホンコン・アイランド/チャイニーズ》とジャングルを人工的な2階建て構造に仕立てた《2階建てジャングル》は、大理石の彫刻作品です。曽根は西洋彫刻の古典的な素材と手法を用いながら、現代的な風景と空想の形を作り出しました。《スカルプチャー・ガーデン・ウィズ・ガーデナー》は、南国の島で行ったパフォーマンスの記録写真を編集、製本した作品です。61枚の写真には、「あらゆる場所をジャングルに変えてしまう魔法の杖」を手に密林を彷徨う作家の姿が写されます。混沌とした世界を「彫刻庭園」に喩え、それを生み出す「庭師」に自らをなぞらえています。映像作品《ハロー・バット》は、ボルネオ島の奥地で無数のコウモリが黄昏時に飛び立つ光景を撮影した作品で、夕暮れに4分間のみ上映されます。多様なメディウムを用い、互いにリンクしながら、曽根の世界は無限に連なり広がっていきます。
《ファーニ・サイクル》 2002年
塚本由晴:1965年神奈川県(日本)生まれ、東京都在住。
貝島桃代:1969年東京都(日本)生まれ、同地在住。
建築家ユニットとして1992年より活動開始。
住宅から都市計画に至る環境デザイン、都市調査の出版、家具のデザイン、美術作品の展覧会への出品、大学での教育など多彩な活動を行います。ユニット名の「ワン」は犬の鳴き声に由来します。
《ファーニ・サイクル》は、2002年の上海ビエンナーレのために制作した作品です。当時の上海において、自転車が移動だけでなく様々にカスタマイズされて荷物の運搬に用いられていること、食事や憩い、ミシンがけなど多くの家事、団欒と商業行為が路上で行われていることに注目し、上海での自転車の使われ方と路上での家具の使われ方を調査しました。この調査に基づき、アトリエ・ワンは椅子、テーブルなどの家具(ファーニチャー)と自転車(サイクル)という異なる2つの機能を合体させました。自転車として移動し、路上で家具として組み合わせることによって、生活の場が出現します。街路の様々な使われ方を示すことにより、公共空間の在り方を再考させる作品です。
《メトロポリス》 2004年
1946年ボストン(米国)生まれ。2015年トパンガにて逝去。
1970年代初頭から過激なパフォーマンスを展開しました。コンセプチュアル・アーティストとしても影響力を持ち、富や権力、軍隊といった題材を取り上げました。
《メトロポリス》では、交通機関を代表とした都市の暴力性を表現しました。おもちゃのパーツやレゴのブロックで作られたニューヨークと思われる街に、一方通行の道路が複雑に入り組みます。おもちゃのミニカーが目まぐるしく走り回る様子は、絶え間ない流れから決して逸れることのできない現代の状況を表しています。道路を一巡した車は最下部で再び回収され、最も高い道路まで強制的に戻されるという仕組みがひたすら繰り返されます。
会期:2024年10月25日(金)〜2025年1月19日(日)
《シーブリーズ アナザー・ディメンション 2024版》 1992/2024年
1962年東京都(日本)生まれ、東京都、ニューヨーク(米国)在住。
東京藝術大学で日本画を学び、1993年同大学で博士号を取得。日本の伝統絵画とマンガ、アニメ、ゲームなどの現代大衆美術表現から一貫した平面性を見出し、「スーパーフラット」理論を提唱しました。日本文化の独自性を前面に押し出す手法で、欧米主導の国際アートシーン及び戦後日本美術への解釈に挑戦しています。
《シーブリーズ》は、村上の制作活動初期の彫刻作品です。車輪の付いた巨大な金属箱の前後両面にあるシャッターを開くと、中心部の赤い円環に配置された16基の水銀灯が一斉に16,000ワット分の熱と光を放ちます。本作は「海のそよ風」というタイトルのイメージと違い、暴力的なエネルギーで見る人に視覚的な衝撃を与えます。《シーブリーズ アナザーディメンション 2024版》は、爆発を想起させる二つの要素の組み合わせとして、《シーブリーズ》本体の展示場所近くの壁を壁紙で全面覆いました。壁紙は1992年に初展示した当時と同様に蛍光ピンクと黄色を背景色とし、1970年代に放送されたアニメシリーズ《タイムボカン》に由来するドクロの形のキノコ雲が配置されました。村上は、ヒーローたちに打ち破れた悪役たちが、原爆を象徴する死の記号であるキノコ雲から自転車に乗って生還するという《タイムボカン》のお決まりプロットに、欧米の日本美術に対するオリエンタリズムの眼差しを破壊できる力を見出しました。
《発酵作用》 2016年
(プロジェクト進行中、コレクション展1からの継続展示)
1993年に結成したアーティスト・ユニット。コペンハーゲンを中心に世界各地でプロジェクトを展開しています。SUPERFLEXは作品を「ツール(道具/手段)」と考え、グラフィック、映像、建築など、様々なメディアを駆使し、コミュニティに内在する課題や関係性に、人々が自ら考えることを促すためのプラットホームを創出します。
《発酵作用》は、円形の当館をシャーレに見立て、来館者に参加を促し共同的な創造へと導く実験装置として制作したものです。除湿機で来場者の吐く息や湿気を集め、除湿後の水を、茶葉や紅茶キノコの菌(スコビー)と混ぜて発酵飲料のコンブチャを作ります。その後、美術館で使うコピー用紙をこのコンブチャで染め、館内で乾燥させます。コンブチャの水分は気化して再び美術館内に戻り、コンブチャ・ペーパーは新しい持ち主の手元で使用されます。アーティストが仕掛けたこの一連の循環の過程によって、美術館というコミュニティを基盤にした新たな関係性が生まれます。
金沢21世紀美術館[公益財団法人金沢芸術創造財団]
北國新聞社